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筋強直性ジストロフィーは筋ジストロフィーの中の1つ
筋ジストロフィーは、筋肉は普通に作られるのですが、少しずつ壊れていってしまう病気です。筋肉が壊れないように支えている仕組みがうまく働かないことによって起こります。筋ジストロフィーは症状・症状が出る時期・遺伝型式・原因などにより多くの種類に分けられます。筋強直性ジストロフィーはその中の1つで、このサイトでは主に筋強直性ジストロフィーのことを扱っていきます。
筋強直性ジストロフィーは成人を障害する筋ジストロフィーの中ではもっとも患者数が多いとされています。
筋強直性ジストロフィー(DM)という名前に統一された
過去、いろんな名前がつけられていたようです。筋緊張性ジストロフィー、筋強直性筋ジストロフィー、ジストロフィー性筋強直症など。今は「筋強直性ジストロフィー」という名前に統一されています。でもまだまだネットで検索すると筋緊張性ジストロフィーなどでも情報がたくさんでてきます。これが混乱する一因ですよね。
筋強直性ジストロフィーは略してDMと表記されます。ラテン語のDystrophia Myotonicaに由来しているそうです。英語ではMyotonic Dystrophyといいます。
1型と2型がある
筋強直性ジストロフィーには1型と2型があることが報告されていますが、ほとんどは1型です。2型は欧米でもきわめてまれで、すべての筋強直性ジストロフィー患者の1%程度の可能性もあり、日本ではさらに低いものになっています。このサイトでは1型を前提としています。また、3型、4型・・と今後発見されていく可能性もあるそうです。DM(1)、DM1型または、DM Type1などと表記されます。
ほかの筋ジストロフィーと異なる特徴
筋力低下以外の"内臓系の症状"が多く、複雑なこと
筋強直性ジストロフィーは多臓器疾患です。筋以外に臓器系(心臓・肺・顎・舌・腸・眼・脳・体のホルモンレベル等)の症状が出ることが特徴です。不整脈、呼吸筋の障害による胸部感染症、嚥下障害(うまく噛んだり飲み込んだりできなくてむせる)、激しい腹痛、白内障、過度の眠気、糖尿病、生殖能力の低下、といった症状が比較的現れやすいようです。
家族間でも症状に大きな違いがあり、結局のところ個人差が大きいです。筋肉の症状よりも支障があることもあります。
筋力低下とともにミオトニアがあること
筋力低下とともに筋強直現象(ミオトニア)があることが、筋強直性ジストロフィーの特徴です。たいていは筋力低下より筋強直現象(ミオトニア)の方が先だって見られるようです。ミオトニアとは筋強直現象のことで、筋肉を弛緩させにくい、元の状態に戻るのに時間がかかる、というものです。手をぐっと強くにぎってそのあとにすぐぱっと開こうとしても、なかなか広がらずゆったりと時間がかかります(把握ミオトニアの検査)。また母指球筋(親指の付け根)を打腱器(診察用ハンマー)で叩いたときに母指が内転し、なかなかまっすぐにならないときなど、このような筋強直を主症状とする疾患にはいくつかの種類がありますが、筋強直性ジストロフィーをもっとも強く疑うことになります。
男女ともに発症すること
X染色体、Y染色体といった性染色体ではなく、原因遺伝子が"常染色体"にあるため男の子にも女の子にも同じ確率で発症する可能性があります。
症状・発症年齢・重症度に個人差が大きい
症状や発症年齢、重症度は幅広く、妊娠中や生まれてすぐの時から重篤な症状がある方から、ほぼ自覚症状なく一生を過ごす方までいます。
先天型・軽症型・古典型
発症の時期も程度も様々で大きく3つ先天型・軽症型・古典型に分けられています。古典型というのが標準型というのにあたります。
筋強直性ジストロフィーの症状
先天型DM
- 通常母親が古典型DM
- 出生前に羊水過多や胎動の減少に気づくこともある
- 出生直後から10歳で発症し、生下時に全身の筋力低下、筋緊張低下、呼吸障害を呈することもある
- 新生児期を乗り越えると徐々に運動発達がみられる
- 50-60%の患者で精神発達の遅れを認める
軽症型DM
- 通常の生活を送り生命予後もほぼ正常で、罹患していることに気づかないことがある
- 白内障、軽度のミオトニア(筋肉が一度収縮すると元に戻りにくい。ぎゅっと力を込めて手をにぎるとパッと開けない。)、糖尿病を呈する
- 20~80歳で発症する
古典型DM(古典型がいわゆる”標準”型)
- 10~30歳で発症する
- 筋力低下、筋委縮、ミオトニア、白内障、心伝導障害(不整脈、心筋障害)、耐糖能異常など様々の臓器の症状を呈する可能性
- 階段を上る時に足が垂れ下がってしまい上りにくい、歩きにくい
- 手の細かい運動が苦手
- 平滑筋の症状として、嚥下障害、便秘、下痢を呈することがある
- 眼球運動の障害、斜視、発語の障害(鼻にかかった声)があることもある
- 白内障
- 精神的問題、知的障害、精巣萎縮、ホルモン異常、睡眠障害などを呈することがある
- 筋性顔貌(頬がこけて、表情が乏しくなる)
症状の悪化について
筋強直性ジストロフィーは進行性の病気ですが、症状が急速に悪化したり、進行のスピードが変化することは普通はありません。過去3年、5年、10年でどのような変化がどのくらいあったのか、を振り返ってみると、ざっくりと将来どのくらい進行するのかを考えることができます。
筋強直性ジストロフィーに悪影響なのはケガ、運動不足、緊急手術(麻酔)、肥満、合併症に対する不十分なモニタリングあるいは治療、誤診の上での治療などです。動かないでいることはダメなんですね。筋トレはやってはいけないそうですが、筋肉痛にならない程度の軽い運動はした方が良いそうです。お義兄さんは「ほとんど動かない」上に「肥満」ですから、対策をしないといけませんね・・。
原因遺伝子について
責任遺伝子:605377 Dystrophia myotonica protein kinase (DMPK) <19q13.32>
遺伝形式:常染色体優性
なぜ発症するのか?
筋強直性ジストロフィーのどのタイプ(先天・軽症・古典)もDMPKという遺伝子がうまく書かれていないことによって起こります。常染色体は1~22番までありますが、その中の19番目の遺伝子にDMPKがあります。遺伝子はお父さん、お母さんからそれぞれ受け取りますが、このときどちらか1つでもDMPKに異常があると発症します。常染色体優性遺伝といいます。
なぜ症状が様々なのか?
DMPKにはCTG(遺伝子の中の塩基配列)が繰り返している領域があります。通常は38~49回繰り返していますが、患者さんの遺伝子は下記のように繰り返しが多くなっています。参考文献によっては、回数の表記に若干のバラつきがありますが、50回を超えてくると症状が出てくる、という見解は同じようです。
- 軽症型では50~150回
- 古典型では100~1500回
- 先天型では1000~2000+回
つまりCTGの繰り返し(CTGリピート)と症状は相関関係にあります。この繰り返し配列の延長によって起きる疾患をリピート病といい、繰り返し配列が長くなるほど発症年齢が低く重症度が重くなる傾向があります。リピート病の中でも繰り返し回数が大きくなりやすい病気の一つです。
なぜ親子で症状が違うのか?
繰り返し回数が、特にお母さんからこどもに伝わるときに伸長する現象があります(表現促進現象)。これにより、軽症型のお母さんから先天型の子どもが生まれることがあります。軽症型あるいは古典型の母親から遺伝する場合は50%が正常(異常のある遺伝情報を受け継がない)、30%は母親と同程度、20%が先天型となって発症する可能性があります。
CTGの繰り返し配列はDNAの転写が生じるたびに変化します。特に精子や卵子を作る減数分裂において大きな変化が生じやすく、CTGリピートが長くなることが多いため、表現促進現象が引き起こします。
筋強直性ジストロフィーの問題点
お義兄さんもそうでしたが、自覚症状が乏しく、病院へ行く・適切な治療を受けるといったことができていない方が大変多いです。個別の症状に対して現在の医療でも対処できることは多いのに、その恩恵を受けられていない方が大勢います。
もっと勉強していきます
筋強直性ジストロフィーは、日本の成人の筋ジストロフィーの中でもっとも患者数が多い遺伝病です。治療法が確立されることを願っています。
これからもっともっと勉強してこのページを更新していきたいと思います。